徳島地方裁判所 昭和25年(行)26号 判決
原告 日本発送電株式会社
被告 徳島県知事 外一名
一、主 文
被告知事が昭和二十五年二月二十八日なした原告の被告知事に対する不動産取得税に関する異議申立却下の決定並びに昭和二十四年十二月二十四日原告に対してなした税額金二百九万六千五百九十四円の不動産取得税賦課処分につき金百九十一万九千七百九十一円四十銭を超える部分はこれを取消す。
被告県は原告に対し金十七万六千八百二円六十銭及びこれに対する昭和二十五年四月十五日より還付済に至る迄年五分の割合による金員を還付せよ。
原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを十分しその九を原告の負担としその一を被告等の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は被告知事が昭和二十五年二月二十八日なした原告の被告知事に対する不動産取得税に関する異議申立却下の決定並びに昭和二十四年十二月二十四日原告に対してなした税額金二百九万六千五百九十四円の不動産取得税の賦課処分はこれを取消す。被告県は原告に対し金二百九万六千五百九十四円及び之に対する昭和二十五年四月十五日より還付済に至る迄百円に付一日十銭の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。との判決を求め、その請求の原因として被告知事は昭和二十四年十二月二十四日原告が訴外伊予川開発株式会社より承継した徳島県三好郡山城谷村所在伊予川発電所における配電盤室基礎、伊予川堰堤、同取水口、相川谷堰堤、同取水口、同水路、水槽(調整池)、水圧管路、吉野川横坑、発電室及び発電室入口道を課税対象として原告に対し税額二百九万六千五百九十四円の不動産取得税を賦課したので原告は昭和二十五年一月二十一日被告知事に対しこれが異議の申立をなしたところ被告知事は同年二月十八日これを却下した。よつて原告は昭和二十五年四月十四日己むなく右税額を被告県に納付した。
然しながら右却下の決定及び賦課処分は次の理由により違法である。
抑々不動産取得税は不動産を対象として課税されるべきものにしてその課税対象となる不動産とは民法第八十六条第一項に謂う土地の定着物であるが土地の定着物は土地と別個に存在する独立の不動産であるからこれに関する物件の得喪変更につき登記或は取引上認められる特別の公示方法をするのでなければ第三者に対抗することができず、従つて不動産と謂うには、その物件に関し独立の登記方法或は立木の場合の明認方法等の如く慣習として認められる公示方法が認められておるものでなくてはならない。本件の前記各課税対象物件は孰れも固く土地と結合し毀損しなければ分離できない状態にあるけれどもこれについて登記等何等の公示方法がないから前述のところよりして土地の定着物たる不動産とは謂うことができず民法第二百四十二条に謂う附合物にして而も同条但書の適用を受くべき動産である。従つて動産を課税対照とする被告知事の賦課処分及びこれに対する原告の異議申立却下の決定は違法なること当然である。
仮に右対象物が不動産でありとするも本件伊予川発電所は名義上は訴外伊予川開発株式会社において建設し同会社から原告に譲渡の形式をとつているが同発電所の事実上の建設者は原告にして原告はその原始取得者であるから曩に右発電所につき不動産取得税を賦課された際にも事実上原告においてこれを負担したもので従つて本件課税は重複課税にして違法である。
よつて原告は被告知事の前記異議申立却下の裁決及び賦課処分の取消を求めると共に被告県に対し、納付済の金二百九万六千五百九十四円及びこれに対する納付日の翌日である昭和二十五年四月十五日より還付済に至る迄百円に付一日十銭の割合による金員の支払を求めるため本訴請求に及んだ次第であると述べ、被告等主張事実中和解乃至不起訴の合意成立の事実を否認し、(一二)配電盤室兼用事務所一棟、(一三)同附属便所一棟、(一四)堰堤操作室(木造平屋建)一棟に対する不動産取得税は別途に賦課せられ原告名儀にて既に納付済であるからこれに対する課税は明かに重複課税であると述べた(立証省略)。
被告両名訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め答弁として原告が訴外伊予川開発株式会社から取得した徳島県三好郡山城谷村所在伊予川発電所の諸物件を対象として被告知事が原告主張の日に原告に対し税額金二百九万六千五百九十四円の不動産取得税を賦課したこと同賦課に対し原告がその主張の日に被告知事に異議の申立をなしたところその主張の日に被告知事が右異議申立却下の決定をなしたこと及び原告が昭和二十五年四月十四日右不動産取得税を被告県に納付したことは孰れもこれを認めるが右課税対象物件が不動産でないとの主張及び本件課税が重複課税であるとの主張はこれを否認する。
被告知事が本件課税をなすにつきその対象となした物件は、
(一) 伊予川堰堤(岸壁護岸工事による石垣及び堰堤上吊橋を含む)
右堰堤は伊予川の河床土岩を堀り鉄筋コンクリートを以て構築されておりその上部に架つている吊橋は木製である。護岸工事は右堰堤の上下流に亘り左右の岩壁の土岸を切り取りコンクリートの基礎工事の上に練積石垣として構築されたもので全長左右共約五十間、高さ約三間である。
(二) 伊予川取水口(階段を含む)
右は沈砂池とスクリーンから成り、沈砂池は土岩を堀りコンクリートで築造した池で擁壁の厚さは約八十糎で、スクリーンは銅、鉄、木の三段より成り取付部はコンクリートで構築され取付部に接して階段があり右階段はコンクリートで構築されている。
(三) 相川谷堰堤
右は相川谷の河床の土岩を堀りコンクリートで築造されている。
(四) 相川谷取水口及び水路
右取水口は相川谷の河床の土岩を堀つてコンクリートで固められており水路はこの取水口より岸に沿つて約四十米に亘り岩盤の上にコンクリートを以て築造したもので、これに続く約四十七米の水路は岩盤を堀つただけのものであるから課税対象外である。
(五) 水槽(調整池)
右は配電盤室の西方山の中腹に岩盤を堀り地中に上下四周を厚さ約八十糎の鉄筋コンクリートで捲立てて築造した調整池である。
(六) 水圧管路
右は水槽と地下発電室との間に地中に土岸を堀り厚さ約九十糎の玉石コンクリートで捲立てて築造した水路で全長約五十一米、一部は鉄管を使用している。
(七) 吉野川横坑
右は水圧管路から吉野川に通ずる放砂路で土岩を堀り厚さ約四十糎の玉石コンクリートで捲立てて築造したものであり全長約百五米の内一部は開渠となつている。
(八) 発電室
右は岩盤を堀り地下に周囲及び天井を厚さ約二米の鉄筋コンクリートで捲立てて築造したもので縦約十四米、横約五、五米高さ約十六米である。
(九) 発電室入口道
右は外部より発電室に通ずる階段で岩盤を堀り厚さ約八十糎のコンクリートで捲立てて築造したもので全長約四十七米、幅約二、五米である。
(一〇) 放水路
右は発電室より吉野川に通ずる全長約百三十米の水路で土岩を堀り厚さ約四十五糎の玉石コンクリートで捲立てて築造したものである。
(一一) 配電盤室基礎(階段、排水溝を含む)
右基礎は山の中腹に配電盤室を建築するために土岩を切り取り高さ約二十米の玉石コンクリートを以て構築して土止めとしたもので全面積約五十坪であり階段は玉石コンクリートで築造したもので全長約三十米、幅約一、五米である排水溝は同じくコンクリートで築造され全長四十米である。
(一二) 配電盤室兼用事務所一棟
右は配電盤室基礎の上に建築された木筋コンクリート製二階建家屋で延坪数約三十二坪である。
(一三) 附属便所一棟、建坪約三坪
(一四) 北堤操作室
右は伊予川取水口のコンクート上に建築された木造平屋建約五坪の建物で現在同コンクリート上に相接して存立する二棟の建物の内、下流側の建物。
であるが右対象物件中(一二)乃至(一四)は建物にして不動産なること当然であるが(一)乃至(一一)の物件は孰れも有形的存在を有する土地の定着物で土地と密着して容易に移動し得ず且つ継続的に土地に附着して使用せられ而も取引観念上土地の構成部分とは認められない独立の存在を有しその固着状態の儘利用せられるもので民法第八十六条所定の不動産と認められる土地の定着物である。
よつて被告知事は以上(一)乃至(一四)の物件に課税するにつき見積つた価格は、
(一) 千五十四万四千五百七十七円
(二) 二百九十五万一千三百九十六円四十六銭
(三) 八千八百十六円九十二銭
(四) 十四万六千六百五十七円五十六銭
(五) 百五十八万八百二円五十一銭
(六) 六十一万一千六百四十二円二十五銭
(七) 四十八万七千六円四十四銭
(八) 二百九十七万四千四十六円七十九銭
(九) 九千七百四十五円
(一〇) 百九万七千百六十二円七十八銭
(一一) 十八万七千五百五十九円五十六銭
(一二) 十一万六千三百三十七円
(一三) 九千九百六十二円六十二銭
(一四) 八万円
合計 二千八十万五千七百十二円九十七銭
で右価格から本件税額を算出したものであると述べ、
抗弁として本件課税については被告知事が原告の異議申立却下の決定をなした後、原告、被告知事間に和解が成立し原告は更に訴願訴訟等をしないことを合意して本件税額を被告県に納付したものであると述べ、原告の重複課税の主張に対し不動産取得税は財産税ではなく流通行為税であるから原始取得者である訴外伊予川開発株式会社に課税したものと同一の課税対象物件であつても承継取得者たる原告に更にその取得税を賦課しうるものであると述べた(立証省略)。
三、理 由
原告が訴外伊予川開発株式会社より取得した徳島県三好郡山城谷村所在伊予川発電所における諸施設を課税対象として被告知事が昭和二十四年十二月二十四日原告に対し税額二百九万六千五百九十四円の不動産取得税を賦課したこと及び同賦課に対し原告が昭和二十五年一月二十一日被告知事に異議の申立をなしたところ昭和二十五年二月十八日右異議申立却下の決定をなしたことは孰れも当事者間に争がなく被告知事が右発電所の施設中その主張の如き(一)乃至(一四)の物件を課税対象としその価格を二千八十万五千七百十二円九十七銭として本件税額二百九万六千五百九十四円の賦課をなしたことは被告等の主張自体より明白にして成立に争のない甲第一号証及び証人庄野義男の証言によれば原告が本件発電所を取得したのは昭和二十三年十一月二十二日であることを認めることができる。
原告は前記(一)乃至(一四)の本件課税対象物件中(一二)乃至(一四)の家屋に対しては既に別途に不動産取得税を賦課せられ原告において既に納付済であるからこれに対する課税は重複課税であると主張するから先づこの点について考えてみるに、成立に争のない甲第五乃至第八号証並びに証人大岩要の証言を綜合すると訴外伊予川開発株式会社は昭和二十二年四月に(一二)の木造瓦葺二階建配電盤室兼事務室一棟及び(一三)の同附属木造瓦葺平屋建便所一棟を同年六月に(一四)の木造瓦葺平屋建ゲート操作室一棟を各建設し昭和二十四年二月二十日これを他の不動産と共に代金四十四万七千四百九十円にて原告に売渡し同年同月二十六日その移転登記をなしたのに対し被告知事が原告に対し税額四万四千七百四十九円の不動産取得税を賦課したので原告において昭和二十五年三月二十四日本件不動産別取得税とは別途に同額の附加税と共に右税金を納付済であることを認めることができる。右認定に反する証人馬詰和夫の証言(第二回)の一部は前顕各証拠に対比し当裁判所の措信しないところで他に右認定を左右するに足る証拠は存しない。従つて本件課税中(一二)乃至(一四)の物件に対する課税は重複課税なること明白にして違法であるから取消さるべきものと謂うべきである。次に(一)乃至(一一)の対象物件につき被告等は不動産取得税の対象となる不動産であると主張するに対し原告は民法第二百四十二条の附合物たる動産であると主張するからこの点について判断することとする。
当裁判所の検証の結果並びに弁論の全趣旨により右対象物件の状況をみるに、
(一) 伊予川堰堤(岸壁護岸工事による石垣及び堰堤上吊橋を含む)
右堰堤は伊予川の本流を山城谷村字政友名において堰止めその水流を右堰堤左岸に接続する伊予川取水口に導入させておるもので堰柱及び堤は伊予川の河床岩盤の上に鉄筋コンクリートを以て構築されたもので、固く岩盤に附着しており、堤上の吊橋は堤柱に固着する鉄筋コンクリートの柱を支柱とし両岸に連なる鋼索によつて支えられ橋上は木製であるが吊橋全体としては堰堤に附着して使用されている(検証時は台風により破損していた)。
護岸工事は右堰堤の上下流に亘り左右岩壁にコンクリートの基礎工事の上に高さ約三間全長左右両岸共約五十間にして左岸堰堤上流において取水口の構造物が介在しておる。両岸護岸工事は堰堤両岸接続点を堅固ならしめ伊予川取水口への土砂の流入を防止しているが結局のところは両岸の土砂崩壊を防止することによつて河川法による公有物たる河川を維持し、殊に伊予川取水口上流に接続する部分は取水口に隣接する土地(運動場)の岸壁として右土地の造成に役立つておる。
(二) 伊予川取水口(階段を含む)
右取水口は堰堤に沿うて伊予川の左岸にあり沈砂池とスクリーン(塵芥の流入を防止するもの)とから成り沈砂池は土岸を堀りコンクリートで築造した池でスクリーンを経て流入した土砂をその池底に沈積させ土砂を排除した水流を更に内側スクリーンを経て本件対象外の第一墜道に導入させており、その擁壁の厚さは約八十糎、スクリーンは伊予川本流と沈砂池との間に二重に沈砂池と右第一墜道間に三重に設けられ共に上段木製中段鉄製下段鋼製の三段となつていてその取付部は全部コンクリートに固着しており、スクリーン取付部に接して夫々コンクリートにて通路及び階段が設けられており本物件全体として土地に固着せられて使用されている。
(三)(四) 相川谷堰堤、同取水口、同水路
右は孰れも山城谷村字相川にあつてここを流れる相川谷の水を堰止めこれを伊予川の本流から発電室に通ずる墜道に流入させているもので、堰堤及び取水口は相川谷の谷床を堀鑿して岩盤の上にコンクリートを以て築造したもので、課税対象とされた水路は取水口より相川谷の右岸に添うて約四十米の間で、岩盤の上にコンクリートを以て築造されており孰れも土地に固着して使用されている。
(五) 水槽(調整池)
右水槽は配電盤室の西方、山の中腹に岩盤を堀鑿して地下築造とされたもので伊予川取水口より墜道を経て来た流水を入れ、これより水圧管路を経て発電所に流入させ、その流水量の調整をなすものでその直径十五米、深さ二十三米で周囲及び天井はすべて厚さ約八十糎の鉄筋コンクリートで捲立てて築造され土地に固着して使用されている。
(六) 水圧管路
水圧管路は水槽と地下発電室との間にある水路で地中にあり全長約五十一、五米あり岩盤を堀鑿したものでそのうち約四十米の間は厚さ約九十糎の玉石コンクリートで捲立て残部約十米余は鉄管で孰れも土地に固着して使用されている。
(七) 吉野川横坑
吉野川横坑は水圧管路の上部から吉野川に通ずる放砂路で全長約百五、五米でうち約九十米は岩盤を堀鑿し厚さ約四十糎の玉石コンクリートで捲立てその直径約二、九米ありその余は厚さ約三十糎の玉石コンクリートで築造され開渠となつており、孰れも土地に固着して使用されている。
(八)(九) 発電室及び発電室入口道
右は共に地下築造となつており発電室入口道は配電盤室基礎の東側に国道に添うて出入口を設け、それより西に向つて地下に約四十度位の傾斜をもつて馬蹄型に導坑堀鑿し周囲及び天井は厚さ約八十糎の玉石コンクリートで捲立てをしており高さ幅共に約二、五米全長約四十七米あり発電室に至る通路として発電室と一体をなしており発電室は岩盤を堀鑿して周囲及び天井を厚さ約二米の鉄筋コンクリートで捲立て底辺が縦十四米、横五、五米、高さ約十六米の建造物で上、下二段になり、その上には発電機二台その他諸機械を階下には水車を据付けて発電をなしており内部は地上存立の発電室と何等変りはない。
(一〇) 放水路
放水路は発電機を経た流水を吉野川に放水する全長約百三十米の水路で全部地下築造となつており、土岩を導坑堀鑿し厚さ約四十五糎の玉石コンクリートで捲立てて築造されたもので土地に固着し使用されている。
(一一) 配電盤室基礎
配電盤室基礎は国道二十三号線(土佐街道)の西側に接する山の中腹にあり建物の基礎とその階段及び排水溝から成つている。建物の基礎は右国道に沿うて高さ約二十米のコンクリートを築いて土止めとし建物の地盤を造成しているもので全面積約五十坪でありその地上には事務室兼配電盤室建坪約十坪の建物が建てられており、階段は右建物の基礎に沿うて南側にあり岩盤の上にコンクリートで築造され全長約三十米、幅約一、五米で国道より右配電盤室兼用事務所及び上方社宅に通じる通路となつており、排水溝は建物の基礎の北側に山の中腹から下方国道に至る間に約六十度の傾斜をもつて厚さ約十五糎のコンクリートで築造された溝でその全長約四十米、内径約一米、深さ約一米の開渠で滲出水を流して附近建物の排水を便ならしめておる。
ことを認めることができ、これら(一)乃至(一一)の物件はすべて土地に附着せる物であつて継続的に一定の土地に附着せしめて使用せられているから土地の定着物にして不動産であると解せられる。然しながら凡そ土地の定着物たる不動産にはその不動産としての取扱上(一)土地と離れて独立の不動産と見られるものと(二)その定着する土地の一部分とせられ土地に関する権利の変動に随伴するものとの二に区別される、而して不動産取得税の対象となる不動産は右(一)のものに限らるべきであつて(二)のものは土地に対する同税の賦課に含まるべきもので独立して同税の賦課の対象とはなり得ないと解するを相当とする。
よつてこの点より右(一)乃至(一一)の各対象物件につき考察するに(一)の伊予川堰堤中の護岸工事及び(一一)の配電盤室基礎については前記認定のところよりすれば取引観念上これを独立した不動産と認めることはできず土地の構成部分と認めるを相当とするから本件不動産取得税の賦課の対象となり得ないから本件課税より除外すべきものとし、その余の対象物件は電気事業法に謂うところの電気工作物であるが、更にそのうち(八)(九)の発電室及び同入口道は前記認定のところよりこれを一体として建物と認めるを相当とするから本件課税対象たり得ること当然にして爾余の(一)伊予川堰堤(吊橋は前記の認定のところよりその定着する堰堤の一部として、堰堤と一体のものと認める)、(二)伊予川取水口、(三)相川谷堰堤、(四)同取水口、同水路、(五)水槽(調整池)、(六)水圧管路、(七)吉野川横坑、(一〇)放水路は前記認定の状況に電気事業設備たる特殊性とを併せ考えると取引観念上、これを独立の不動産として取扱うべきを相当とし原告主張の如き附合物たる動産とは到底認められない。尤も右物件については原告主張のように登記或は立木における明認方法等の公示方法のないことは明かであるが、右物件に関する物権変動については電気事業法第二十五条ノ二によると電気事業者が事業設備を他に譲渡し或は所有権以外の権利の目的となすには必ず主務大臣たる通商産業大臣(当時にあつては商工大臣)の認可を受けることを必要とするから第三者を害し或は権利関係を複雑ならしめる虞なく不動産物権公示の原則に欠けるところがないものと謂つて然るべきである。而して既に認定した如く原告は昭和二十三年十一月二十二日右物件を訴外伊予川開発株式会社より取得した(取得したことは当事者間に争がない)ものであるからその取得当時施行の地方税法により被告知事は右物件の取得に対し当に不動産取得税を賦課しうることは当然である。なお附言するに不動産取得税は前記の如く土地建物の外に土地の定着物にして独立の存在を有するものについても賦課し得べきものと解すべきであるが同税賦課の実際上の取扱について行政庁の内部的指示である昭和十五年四月一日附発地第三十七号(改正昭和二十一年三月二十六日地発甲第二十六号、同年八月十七日地発甲第七号)「地方税法並に同法施行に関する命令の実施に関する件依命通牒」第五項により不動産取得税は土地又は家屋の取得に対してのみ課すべきこととされていたところ昭和二十二年四月二十四日発地第一〇四号通牒により右通牒が廃せられ新通牒には唯同税の賦課率についてのみ定められておるところよりその後の取扱においては土地家屋以外の独立の存在を有する不動産の取得についても課税しうることとなつたものと謂うべきで前記物件に対する課税はこの点よりしても正当である。
よつて進んで右正当とされる課税対象の税額について考えるに成立に争のない乙第二号証、当裁判所の検証の結果並びに弁論の全趣旨を綜合すると右課税対象の取得価格は金千九百十九万七千九百十三円九十七銭を相当とするからこれよりその不動産得得税の税額を算出すると金百九十一万九千七百九十一円四十銭となる。
次に原告の重複課税であるとの主張につき考察するに成立に争のない乙第一号証及び証人金谷勉一、同庄野義男、同馬詰和夫(第一、二回)(不措信の部分を除く)の各証言並びに弁論の全趣旨によると本件発電所は訴外伊予川開発株式会社が訴外美馬水力株式会社の委託を受けてこれを建設し昭和二十二年八月二十六日美馬水力株式会社より認可申請をなしてその頃その発電を開始し同年十月頃完成されたものであること、被告知事が昭和二十三年度分として美馬水力株式会社名義にて同会社に対し本件課税対象と同一対象物件につき約五十万円の不動産取得を賦課したところ、当時右発電所は原告に対してこれを譲渡する計画を樹てていたため発電所関係の会計は依然右伊予川開発株式会社において担当していたので同会社において、右税額及び同額の附加税を納付したこと並びに右伊予川開発株式会社が昭和二十三年十一月二十二日原告に本件発電所を譲渡することとなつた際右納付税金を含めた価格を以てこれを譲渡し従つて実質的には原告において右税金を負担したものであることを認めることができるが、叙上認定のところよりすると訴外伊予川開発株式会社は昭和二十二年八月二十六日頃本件発電所の発電を開始し同年十月頃これを完成し昭和二十三年十一月二十二日原告会社にこれを譲渡したものであるから、その間右訴外会社が美馬水力株式会社との間において右発電施設を利用してその発電電力を有利に利用していたことを窺うに難くない。よつて右訴外会社をその原始取得者と認め原告会社はその承継取得と認めるのを相当とするから、たとえ実質的に原告が曩の不動産取得税を負担したとしてもそれは伊予川開発株式会社が負担すべきものを代つてしたものと謂うべく従つて原告の取得に対し更に同税を賦課することは随時税たる不動産取得税の性質上何等重複課税とはならないものと謂わねばならない。よつて原告の右主張は採用し難い。
次いで被告等は本件納税につき原告と和解が成立し、原告との間に本件賦課につき更に訴願、訴訟をしないという所謂不起訴の合意ができたと主張し和解の主張にそう証人武市一夫・同馬詰和夫の各証言の一部は当裁判所の措信しないところで証人武市一夫・同馬詰和夫(第一回)(孰れも不措信の部分は除く)同西村寛治同谷光次の各証言を綜合すると原告は被告知事の本件異議申立却下決定の後、昭和二十五年三月初頃より被告知事と右税金の納付の延期、延滞金の徴収免除について交渉し已むなく一応これを納付することとしたこと及び原告より本件課税は未だその例に乏しいから他府県に内密にして貰い度い旨の申出があつたことが認められ右認定事実を以てしては未だ和解が成立したものとは謂われない。又被告等主張の如き不起訴の合意があつたとの点についてはこれを認めるに足る証拠がないから被告等の右主張は亦採用し難い。
以上の次第であるから本件課税額中前記相当と認める税額百九十一万九千七百九十一円四十銭を超える部分は違法と謂うべく従つて被告知事のなした本件異議申立却下の決定及び賦課処分は右税額を超える部分については違法であるからこれを取消すべきものとし原告が昭和二十五年四月十四日被告県に対し右賦課に係る不動産取得税金二百九万六千五百九十四円を納付したことは当事者間に争がないから被告県はこれと右算定に係る税額との差額金十七万六千八百二円六十銭を原告に還付すべき義務あるものと謂うべきである。
よつて原告の本訴請求中被告知事のなした異議申立却下決定及び賦課処分につき税額金百九十一万九千七百九十一円四十銭を超える部分の取消並びに被告県に対し金十七万六千八百二円六十銭及びこれに対する納付日の翌日たる昭和二十五年四月十五日より還付済に至る迄民法所定の年五分(本件課税当時の地方税法には過納税還付の利率に関する規定がない)の割合による金員の還付を求める部分は正当としてこれを認容しその余は失当として棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十三条第一項本文第九十五条本文を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 今谷健一 小川豪 尾鼻輝次)